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東京家庭裁判所八王子支部 昭和63年(家)279号 審判

申立人 山野克彦 外1名

事件本人 山野友紀 外2名

主文

事件本人山野友紀及び山野舞をいずれも申立人両名の特別養子とする。

理由

1  本件記録及び昭和61年(家)第3993号、第3994号事件記録にそれぞれ編綴された各資料並びに事実調査の結果によれば、次の事実を認めることができる。

(1)  申立人両名は、昭和57年7月5日婚姻した夫婦であるが、子宝に恵まれなかったことから、養子縁組里親の申込みをし、同60年9月19日○○知事からその認定・登録を受けていたところ、同61年5月5日児童相談所長の里親委託を受けて双生児である事件本人山野友紀及び同山野舞(以下、両名を本児らという。)を引き取り、以来その指導に従って本児らを監護養育し、その間当裁判所の許可を得て、同62年1月17日本児らを養子とする縁組届出をした。

(2)  申立人克彦は警視庁○○警察署勤務の警察官であり、また、申立人要子は家事と育児に専念しており、他に不動産や預金等の資産を有している。

申立人夫婦ともに健康に恵まれ、経済的にも安定し、夫婦関係も円満であって、本児らを愛情深く育んでおり、その監護状況について問題はなく、また、本児らも申立人夫婦に引き取られて以来、心身ともに健全に成長し、申立人夫婦を実親と思い込みよく懐いている。

(3)  事件本人井原千恵は、定時生高校1年生の時、池田啓と深い仲になり、同人の子である本児らを懐妊し、16歳で本児らを出産したのであるが、経済的に困窮し、児童相談所を通じて里子に出すため本児らを乳児院に預けた。

同千恵は、現在、失職中であり、その母の僅かな収入に依存し、貧困な生活を送っており、本児らを申立人夫婦の特別養子とすることに同意している。

本児らは、いずれも嫡出でない子であって、血縁上の父と目される池田啓から認知されていない。

2  以上の認定事実によれば、本件は、民法817条の3から817条の7までに定める要件をすべて充足していることが明らかであり、かつ、申立人夫婦の養親としての適格性及び本児らとの間の適合性についても問題はないというべきであるから、いずれも特別養子縁組を成立させるのが相当である。

なお、民法817条の7に規定する要件の該当性について付言するに、昭和63年1月1日から施行された改正法(昭和62年法律第101号)施行前に普通養子縁組をした夫婦については、当時、特別養子縁組を相当とする事情があっても、これを選択することが不可能であったのであるから、改正法施行後にさらに特別養子縁組をしようとする場合には、普通養子縁組を経ずに特別養子縁組をする場合と同様に取り扱うのが立法の精神に合致するものと解されるから、普通養子縁組当時及び現時点において、実親との関係で民法817条の7の「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であること」という要件を満たしているのであれば、同規定の「特別の事情がある場合」に該当するものと認め、特別養子に切り換えることも許容されるというべきである。

よって、本件申立てを相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 山田勇)

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